結論:適正ウェイトでフィンを止め、排気して息をしっかり吐こう
こんにちは、佐野です。
適正ウェイトでのフリー潜行、問題なくできますか?初心者が中性浮力に次いでダイビングスキルで苦手な方が多いのがフリー潜行です。
フリー潜行は潜行ロープに頼らない(フリー)で潜行する方法ですが、ビーチエントリーでのダイビング講習の時には斜めに潜っていくので実際に練習していなかったり、オーバーウェイトでフリー潜行の練習をしただけだったりといったこともあり、ライセンス講習では適正ウェイトで十分な回数練習していない方が多いスキルです。
フリー潜行が苦手だと、ボートダイビングで毎回自分だけ潜行できないかも!?と不安にならないといけないなんてことになります。
初心者向けのボートダイビングであれば、潜行ロープがあることがほとんどですし、ガイドさんにあらかじめフリー潜行に不安があると伝えておくと、潜行を手伝ってくれたりしますが、経験本数がそこそこ増えてもフリー潜行できないのはちょっと恥ずかしいと感じるかと思います。
ファンダイビングで練習できればいいのですが、降雨集ではないのでしっかり練習させてもらえないのがファンダイビングの辛いところです。
潜行ロープを使って潜行できればダイビング自体は楽しめますが、中級者ポイントになってくると潜行ロープがないなんてことも普通なので、マスターしておきたいスキルです。
フリー潜行はダイバーとして最低限身につけておきたいスキルの一つですが、いつもオーバーウェイトで潜行していて、できると勘違いしてしまっている方も多いので、適正ウェイトでフリー潜行が正しくできているのかを見直すことが大切です。
フリー潜行が出来ない原因と対処法
今回はフィートファースト潜行(立った姿勢のままの姿勢)が上手くできない原因について解説していきます。
ここにあるポイントを押さえれば、フリー潜行はそれほど難しくありません。
潜行は何回かに分けて行う
上級者の潜行を見ていると、潜行開始から水中の集合地点まで切れ目なく行っているように見えますが、実は潜行は2~3段階に分けて行っています。
上級者になるほどスムーズな動きになるため1動作で潜行していっているように見えますが、出来れば2段階ぐらいに分けて潜行していくとスムーズです。
まずは頭がすっぽり水面からでなくなるところまでの1段目。30cm~50cmぐらいの水深まで潜行したら一度息を吸って耳抜きをします。
耳が抜けたら2段目の潜行に入ります。
再度息をはくと再び沈み始めます。おおよそ、80cm~1.2mぐらいまでの水深になるので、もう一度吸って耳抜きをします。これが2段目です。
通常であればここまでくれば沈む力(マイナス浮力)の方が大きくなってくるので、何もしなくてもゆっくりゆっくり沈んでいきます。
もし、まだ浮いていくような感じがあれば、ここでもう一度息をはいて水深を下げます。これが3段階目です。
それぞれの段階でタンクの重さで後ろにひっくり返されているようであれば、寝返りを打って前傾姿勢に戻しましょう。
ウェイトが軽すぎる・重すぎる
ウェイトをつけていないなどでなければほぼ原因としてはありませんが、適正ウェイトよりも軽すぎると当然ですが潜行はできません。
適正ウェイトの調べ方はライセンス講習でもやった通り、BCDの空気を全部抜いてレギュレーターで呼吸した状態で水面が目線ぐらいに来るかどうかです。
ライセンス講習や初心者向けのファンダイビングではオーバーウェイトで潜っていることが多いので、改めて適正ウェイトを確認しましょう。
オーバーウェイトだとフリー潜行自体は出来ますが、早く潜行していってしまって耳抜きが間に合わなくなってしまう、姿勢の保持が大変、中層で止まれないなどの別のトラブルの原因になるので、適正ウエイトで潜行できるようになりましょう。
フィンが動いている
潜行できない理由で意外と多いのが、姿勢を保つためにフィンを無意識に動かしてしまっていることがあります。
フィンが動いたままBCDの空気を抜いても、上への推進力が発生してしまうので、潜行することが出来ません。
水に慣れていないと、BCDの浮力に体を預けることが出来ず、一生懸命自分でフィンを動かして姿勢を保とうとしてしまうので、水面待機中にフィンが動いていないか目視で確認して、水面でフィンを動かさないでいられるようになる練習をしましょう。
水面でフィンを動かさないでいられるようになれば、潜行するときもそのまま潜行するだけなので、この問題は解決します。
BCD・ドライスーツの排気が出来ていない
フィートファースト潜行は、体をしっかりと起こして垂直に近い姿勢にしてインフレーターをしっかりと上に上げて排気ボタンを押さないと、インフレーターから排気できません。
体が水平に近い状態のまま排気ボタンを押したり、インフレーターを上に上げずに排気ボタンを押しても排気されないので、注意です。
ドライスーツ排気は水中に入った時点で肩の排気バルブから排気を済ませておくか、リストバルブがある場合には自動排気するようにしておくと、インフレーターを上に上げたときに一緒にリストバルブから空気が排気されていきます。
息がはけていない
適正ウエイトの状態であれば、BCDから排気できた時点で水面が目の高さまでは沈みます。
潜行の際は肺の中にある空気をはき出すことで、更に浮力を小さくして潜行していきますので息をしっかりとはくことが大切です。
意識的に息をはいているのに潜行できない場合は、肺の中に空気がある程度残ってしまっていることがありますので、むやみにウェイトを増やす前に息をはききる練習をしましょう。
緊張から息をはけない
緊張しすぎていると自分では息をはいているつもりでも、呼吸筋が収縮したままで息をしっかりはくことが出来ません。
ぷかぷか浮いて脱力した状態から、リラックスして肩の力が抜けて、肩が落ちてくるまで長くゆっくりはいていってください。
息切れしている
潜行前にフィンをバタバタさせたり、フィンをはくのに手間取ったり、タンクを背負って歩いてのエントリーでは息切れしてしまっていることが原因の場合もあります。
息切れして呼吸が早くなったり、はききれなくなったり、息をはいてからも息苦しさから、潜行が始まる前にすぐに息を吸ってしまうと潜行できません。
一旦、あおむけで脱力してぷかぷか浮いて呼吸を整えて息切れを解消してから潜行を開始しましょう。
BCD・ドライスーツの排気と呼気のタイミングがずれている
BCD・ドライスーツの排気と呼気のタイミングを揃えると潜行しやすくなります。
排気をした瞬間に沈みやすくなるのではなく、浮力には多少のタイムラグがあります。
それぞれ別々のタイミングでゆっくりやっても潜行は可能ですが、息をはききった状態で潜行がはじまるまで長い時間息をこらえるのは大変です。
潜行する前に息を再び吸ってしまうといつまでたっても潜行できません。
BCDの排気のタイミングと息をはくタイミングを合わせると、同じタイミングで浮力が解除されて潜行の勢いがつくので30cm~50cmぐらいまで一気に潜行を行うことが出来ます。
フリー潜行の裏技
フリー潜行をスムーズに行う裏技になりますが、勢いをつけて潜行を開始する方法もあります。
潜行を開始するときにフィンキックを行って体が浮き上がって沈むタイミングで排気と息をはきだして潜行する方法です。
初心者の方はあらかじめBCD・ドライスーツから排気しておき水面が目線の高さになったところから、顔~肩が水面から一度出るぐらいのフィンキックを行い息をはいて足を止めます。
勢いがつくので一気に潜行できますが、耳抜きがスムーズにできないと、耳を傷めてしまうので耳抜きが間に合うようになってから練習してみるのもありです。
フリー潜行中の姿勢
フィートファースト潜行では、タンクの重さで後ろにひっくり返されやすくなります。
これをフィンキックで元に戻そうとすると潜行中にバタバタしてしまい、息も上がって潜行しただけでエアをかなり消費してしまう原因になります。
フィートファーストの場合は前傾姿勢で足を前後に開くことでバランスを保ちつつ潜行速度を抑えるのが基本姿勢となります。
コントロールできないと、ひっくり返りながら墜落していくように潜行していくことになりますが、先に先行していたダイバーの上に落下したり、そのまま海底に墜落してサンゴなどを傷つける原因にもなるので、フリー潜行中は前傾もしくは水平姿勢(トリム)を保つようにしましょう。
もしひっくり返されてしまった場合には、慌てずに寝返りを打つように横回転すると、すぐに前傾姿勢に戻れます。
フィンキックで姿勢をもとに戻そうとしないことが大切です。
講習やガイドさんはオーバーウエイトを推奨する場合がある
ダイビング講習や初心者さんを連れてダイビングする際に、ウェイト量を相談するとオーバーウェイト気味のウェイト量になることが多いです。
安全管理をしないといけない側の立場からすると、初心者さんを連れている場合一番怖いのは急浮上なので、水深をそれほど大きく変えない浅い水深でのダイビングであれば、オーバーウェイトにしておいた方が急浮上が起こりにくいというメリットがあります。
また、一人だけ潜行できないで手助けが必要になるといった問題もオーバーウェイトであれば解決してくれます。
その為、オーバーウェイトを勧められることが少なくありません。
オーバーウェイトはお勧めできない
オーバーウェイトで潜って、BCDで浮力を調整すればいいという意見もありますがオーバーウェイトで潜るのはすぐに辞めて適正ウェイトで潜るようにしたほうが良いです。
フリー潜行が苦手な状態でオーバーウェイトで潜ると、潜行スピードをうまく扱えず、潜行というより墜落して、耳抜きが間に合わず、鼓膜が破けてしまうという事故にもなりかねません。
何とか潜行できても、重たければ重たいほど水中での動きが悪くなり、フィンキックも増えてエア消費も早くなり、浮力調整自体も難しくなります。
水中に入ると浮力があるので、重さはあまり関係ないのでは?と思いますが、重ければ重いほどそれだけBCDに多くの空気を給気する必要があります。
そうなると、BCDをより大きく膨らませる必要があるため、容積が増える分水の抵抗が増えて泳ぐ際により多くフィンキックを行う必要が出てきます。運動量が増えるのでエアの消費も早くなります。
また、講習や初心者向けのファンダイビングのように最初から最後まで浅い水深でのダイビングではメリットになった急浮上の予防効果も、ある程度の深さまで行うダイビングでは水深が浅くなってきた際にBCDの中の空気が急激に膨らむ為、BCDの排気をせずにいると急浮上につながります。
潜行時にもたつきにくい以外のメリットがあまりなく、潜ってから浮上するまでのダイビング全体の質を下げてしまうのが、オーバーウェイトでのダイビングです。
潜れないかもしれないという理由でオーバーウェイトになっている方は、適正ウェイトで潜行できるよう練習が必要です。
まとめ
フリー潜行が苦手な多くの方は、ウェイト量・フィンの動き・排気・呼気といった「基本の組み合わせ」が噛み合っていないことが多いです。
適正ウェイトで浮力が整っていれば、あとは フィンを止めて、しっかり排気し、息をゆっくりとはききる ことでフリー潜行は難しくありません。
何となく出来ている「つもり」で続けてしまうと、オーバーウェイト癖や無駄なエア消費、姿勢の乱れなど悪循環にもつながりがちです。
今回紹介したポイントを一つずつ見直すだけで、フリー潜行は驚くほど安定します。
適正ウェイトで、無駄なく美しく潜れるダイバーを目指しましょう!

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