こんにちは!西伊豆・獅子浜を拠点に活動している、練習専門ダイビングガイド『ボイヤンシー』の佐野です。
ダイビング中、ガイドやベテランダイバーの後ろ姿を見て「スイスイ進んでいるのに、全然砂を巻き上げていないな」と不思議に思ったことはありませんか?一生懸命漕いでいるのに置いていかれる切なさ…
その秘密の多くは「あおり足(フロッグキック)」にあります。
初心者のうちはバタ足(フラッターキック)が主流ですが、バタ足は構造上、フィンの先が下を向きやすく、水底の砂を巻き上げて視界を遮ってしまう原因になります。
そのため、中級者へのステップアップにおいて、あおり足の習得は避けては通れない道です。
しかし、多くのダイバーがここで壁にぶつかります。
講習でさらっと教わっただけだったり、ガイドさんにコツを聞いても「足の裏で水を挟む感覚だよ」といった抽象的なアドバイスで終わってしまったり…。
そもそも、あおり足って今回ご紹介するだけでも3タイプありますが、実際にはさらに多様な手法が存在し、『これこそが唯一の正解』という固定された型はありません
今回は、練習専門ガイドの視点から、あおり足を「動作分析」に基づき3つのタイプに細分化して詳しく解説します。
自分がどの段階にいて、何を目指すべきかを明確にしていきましょう。
あおり足の本質:なぜ「挟む」だけではダメなのか?
あおり足の基本原理は「平泳ぎのキック」に似ていますが、決定的な違いは「フィンを履いていること」と「抵抗を最小限にするトリム(姿勢)」の維持です。
ただ足を横に開いて閉じるだけでは、フィンが水の抵抗をまともに受けてしまい、体力を消耗するわりに進みません。
実は、あおり足は細かく分けると以下の3つのタイプに分類でき(もっと細かくもできますが・・・)、それぞれ使いどころが異なります。
1. スタンダードあおり足(膝支点タイプ)
【特徴】 一般的なガイドやベテランが最も多用する、バランスの取れたフォームです。 主に「膝」を支点とし、膝から下を外側にスライドさせるように開き、フィンの面で水を捉えて後方へ押し出します。
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長所: 安定感があり、長時間の移動でも疲れにくい。
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短所: 足を横に広げる際、無意識にガニ股になりすぎると、岩場などにフィンをぶつけやすくなる。
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アドバイス: 「足を広げる」という意識よりも、「膝の位置を固定したまま、足首を外に放り出す」イメージを持つと、水の抵抗を抑えたコンパクトなフォームになります。
しっかり習得しないと、単なる『ガニ股』に見えてしまい、見た目も効率も損なわれるフォームです。
2. マイクロあおり足(足首・フィン先活用タイプ)
【特徴】 洞窟(ケーブ)や沈船、またはウミウシ探しの最中など、極限まで砂を巻きたくないシーンや少しだけの微調整の移動で活躍します。
膝や股関節はほとんど動かさず、「股関節+足首のひねり」と「フィンのしなり」だけで推進力を生み出します。
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長所: 砂の巻き上げがほぼゼロ。数センチ単位の微調整が可能。
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短所: 推進力が極めて弱いため、流れがある場所での移動には向かない。
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アドバイス: ホバリング(静止)の状態から、踵(かかと)同士を近づけたまま、つま先だけを外に煽る感覚です。
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フィン全体の1/3程度だけを動かすイメージで行うと上手くいきます。
3. パワフルあおり足(股関節・大腿駆動タイプ)
【特徴】 「あおり足なのにバタ足より速い」という爆発的な推進力を生むプロ向けの技術です。 膝だけでなく「股関節(太もも)」から大きく足を動かし、大量の水を後方へ一気に押し出します。ダイビングのあおり足の推進力に、水泳の平泳ぎの推進力を加えたようなキックになります。
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長所: 向かい潮でもグングン進む圧倒的な推進力。
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短所: 動作が大きいため、体幹が強くないと姿勢(トリム)が上下にブレやすく、砂を巻き上げるリスクも高まる。
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アドバイス: 水を後ろに蹴り出す際、足の裏を真後ろに向ける「足首の柔軟性」が求められます。
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スクーターのように進みたい時に有効ですが、まずはタイプ1を完璧にマスターしてから挑戦すべき高度な技術です。
あなたの上達を妨げている「感覚」の正体
なぜ、言われた通りにやっても上手くできないのか。それは、多くの人が「フィンが水中でどうしなっているか」を視覚的にイメージできていないからです。
あおり足は「蹴る」動作よりも、蹴った後の「フィンの戻り(しなり)」で進む時間が長いため、キックの後にしっかり「タメ(静止時間)」を作ることが重要です。
焦ってバタバタとあおってしまうと、せっかく生み出した推進力を自分の足でブレーキをかけてしまうことになります。
「感覚」を「理論」に変えること。それが上達への一番の近道です。
西伊豆・獅子浜で「本物のスキル」を身につけませんか?
ボイヤンシーの「スキルアップ・プラクティス」では、こうした動作分析に基づき、お客様一人ひとりの癖を見抜き、最適なフォームへと修正していきます。
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「あおり足をやっているつもりなのに、なぜか足が沈んでしまう」
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「ガイドに置いていかれないよう、必死に漕いで疲れてしまう」
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「自分のフォームを客観的に見て直してほしい」
そんな悩みをお持ちの方、ぜひ獅子浜の穏やかな海でじっくり練習しましょう。
万が一の器材トラブルにも慌てない「余裕」を作り、お持ちの器材を本当の「身体の一部」にするためのお手伝いをさせていただきます。
次回のダイビングで、あなたの後ろ姿が変わる瞬間を体験してください。

